「え、養生なしで運ぶの?」「壁むき出しで台車通るの?」
引越し当日、業者が養生(保護シート)を貼らずに作業を始めようとしたら、それは危険信号です。
そのまま進めると、壁や床に傷がつくだけでなく、賃貸の場合は退去時に高額な原状回復費用(敷金からの差し引き)を請求されるリスクがあります。
💡 プロの結論:養生しないのは「異常」です
共用部は義務、専有部はマナー。
「しません」と言われたら、その場で作業を止めて交渉する権利があります。
本来プロなら行うべき養生をしない理由は、大きく分けて3つあります。
「積載のみプラン」「節約コース」など、コストカットのために養生資材や手間を省く契約になっているケース。契約書に小さく「養生はオプション」と書かれていることがあります。
養生には時間がかかります。次の現場に急ぎたい作業員が、勝手な判断で「ここは広いから大丈夫だろう」と省略するケース。これは完全な怠慢です。
最も悪質なケースです。そもそも養生資材(プラダンやマット)をトラックに積んでおらず、やる気がない業者です。中小の格安業者や個人配送業者に見られます。
全ての場所を完璧に養生するのは難しくても、以下のエリアだけは死守してください。ここが傷つくとトラブルが大きくなります。
| エリア | 重要度 | 理由 |
|---|---|---|
| エントランス・EV (マンション共用部) |
必須 | 管理組合や大家さんとのトラブルに直結。台車が通る床、エレベーターの三方枠は傷つきやすく、修繕費も高額。 |
| 玄関・上がり框 (専有部入り口) |
必須 | 最も荷物が通過する場所。靴の脱ぎ履きや、大型家具の回転で壁紙が破れやすい魔のスポット。 |
| フローリング (室内床) |
推奨 | 賃貸の場合、深い傷は退去費用請求の対象。特に冷蔵庫を置く場所までの動線は保護すべき。 |
作業が進んで傷がつく前に、勇気を出して声を上げてください。
「すみません、養生はしていただけますか?」と丁寧に、しかしハッキリ聞いてください。遠慮は無用です。
「全部無理なら、せめてエレベーターの入り口と、玄関の角だけはお願いします」と妥協案を出します。一点張りするより通りやすいです。
手元のスマホで見積もりメールを見返し、「養生費」が含まれていないか、あるいは「簡易養生一式」という記載がないか確認します。
ここで引いてはいけません。相手を動かす魔法の言葉があります。
「このマンション、管理規約で共用部の養生が義務付けられているんです。
管理人に怒られると作業が中止になってしまうので、見えるところだけでもお願いします。」
※ 実際に多くのマンションで養生は義務です。これを言われると業者は「作業停止」を恐れて従わざるを得ません。
業者が頑として動かない、または資材がない場合、自分の家を守るために自衛します。ただし注意点があります。
焦ってガムテープを床に直接貼ると、剥がす時にワックスやフローリングの表面ごと剥がれてしまい、逆に補修費用がかかります。
原則:業者の責任です。
「養生不足」が原因の破損は、補償対象になります。ただし、証拠が必要です。
引越し業界歴23年。新築マンションの一斉入居管理なども経験。「養生は建物を守るだけでなく、作業員の意識を高める儀式」という信念を持ち、手抜き業者による被害を減らすための啓蒙活動を行っている。