「作業員さんが大変そうだから手伝おう」「子供も興味津々だから見学させよう」
その優しさや油断が、実は引越し作業における最大のリスクです。
実は、あなたのその行動が原因で「保険が下りない」「作業が終わらない」という事態を招いているかもしれません。
業界歴23年のプロが、お客様に「絶対にやってほしくない」と願うNG行動を、リスク別にランキング形式で解説します。
💡 プロの結論:お客様の仕事は「立ってるだけ」でいい
手出しは無用。指示出しと最終確認だけがあなたの役割です。
良かれと思った手伝いが、万が一の際の「保険金ゼロ」を招きます。
引越しには「運送業者貨物賠償責任保険」が適用されますが、あなたの行動次第でこれが無効になります。
「重そうだから反対側を持ちます」は禁句です。もし手を滑らせて家具を落とした場合、あなたが関与しているため「業者の全責任」にならず、保険が適用されない(補償ゼロ)か、大幅な減額になります。
⚠ 補償対象外リスク:特大現金、通帳、印鑑、貴金属、有価証券。これらは「標準引越運送約款」で引受拒絶(運べないもの)と定義されています。万が一紛失しても、業者は一切の責任を負いません。必ず手持ちのバッグに入れてください。
⚠ 紛失時補償ゼロ早く終わらせたくて、トラックの荷台や部屋の壁を確認せずにサインするのは危険です。サインは「全ての作業が問題なく完了した」という証明書です。後で傷を見つけても「サインしましたよね?」と言われたらおしまいです。
⚠ 泣き寝入りリスク:大タンス預金(へそくり)は最もトラブルになりやすい事例です。運搬中に引き出しが開いて落ちたり、紛失した場合、それを証明する手立てがありません。「盗まれた」と主張しても証拠がなく、泥沼化します。
⚠ 盗難疑義トラブルプロの現場は戦場です。安全管理ができていないと、最悪の場合、救急車を呼ぶことになります。
作業員は前が見えない状態で50kg以上の荷物を運んでいます。足元に急に子供やペットが来ても止まれません。衝突すれば大事故です。当日はベビーシッターに預けるか、搬出が終わった空の部屋に隔離してください。
⚠ 人身事故リスク:大ヘアスプレー、カセットボンベ、石油ストーブの灯油、使いかけの食用油。これらは発火や液漏れの原因になります。特に夏場のトラック庫内は高温になるため、スプレー缶の爆発事故リスクがあります。これらも約款で運搬拒否対象です。
⚠ 火災・汚損リスク「丁寧」と「邪魔」は紙一重です。作業時間を長引かせる行動がこちらです。
「タンスの裏のホコリを取りたい」気持ちは分かりますが、作業員は次々と荷物を運び出したいのです。掃除機を持ってウロウロされると動線が塞がります。掃除は「全ての荷物が出た後」にまとめて行いましょう。
⚠ 時間延長の原因作業中は「これ捨てますか?」「この傷は元からですか?」と確認が頻繁に発生します。電話中で話しかけられないと、作業員は手を止めて待つしかありません。
⚠ 確認漏れ・作業中断新築などでトイレを使わせたくない場合、作業員は近所のコンビニへ行きます。これで往復15分×人数分のロスが発生します。スムーズに終わらせたいなら、トイレは貸すのが賢明です。
⚠ 大幅なタイムロス邪魔にならないようにと気を遣って姿を消しすぎると、質問したい時に見つかりません。理想は「玄関や廊下の隅で、いつでも声が届く場所にいる」ことです。
⚠ 勝手な判断による配置ミス「何か出さないと失礼?」と悩む必要はありませんが、出すならマナーがあります。間違った差し入れは逆に迷惑になります。
| 項目 | ⭕ 喜ばれる正解 | ❌ 避けるべき不正解 |
|---|---|---|
| 飲み物 | ペットボトル(水・お茶・スポドリ) ※常温だとお腹を壊さず尚良し |
紙コップ(こぼれる)、炭酸(ゲップが出る)、コーヒー(利尿作用でトイレが近くなる) |
| 食べ物 | 個包装のチョコ・飴・煎餅 ※ポケットに入れて後で食べられる |
ケーキ・果物(手が汚れる・皿が必要)、スナック菓子(粉が落ちる) |
| 心付け | ポチ袋に入れて1人1,000円程度 ※義務ではありません。作業開始前に。 |
現金を裸で渡す、作業中に無理やりポケットにねじ込む |
知らずに手伝っていると、あなた自身が法的に不利な立場に追い込まれます。
例えば、作業員が運んでいるタンスを、あなたが親切心で「支えよう」として手を出したとします。
その瞬間、バランスが崩れてタンスが壁に激突し、壁に穴が開きました。
この場合、業者側は「お客様が手を出したせいでバランスが崩れた(過失相殺)」を主張できます。
本来なら業者が100%負担する修理費用が、「お客様も3割悪い」となれば、補償額が減らされるのです。
プロの領域には、絶対に踏み込まないでください。それがあなた自身を守ります。
引越し業界歴23年。現場リーダーとして数千件を指揮。お客様の「手伝い」が原因で起きた事故や、過度な親切心が招いたトラブルを多数目撃。「何もしないことが最大の協力」という逆説的な真理を提唱している。