「運ばないでと言った不用品を新居に持ってこられた」「この部屋の荷物は2階へと伝えたのに1階に積まれた」
引越し当日のトラブルで最も多いのが、こうした「作業員への指示が伝わらない(無視される)」問題です。
実はこれ、単なるコミュニケーション不足ではなく、引越し現場特有の構造的な欠陥が原因です。本記事では、業界歴23年の元現場管理職が、口下手な方でも確実に作業員をコントロールできる「指示書作成術」と「現場での立ち回り」を徹底解説します。
💡 プロの結論:指示は「口」ではなく「目」で伝えろ
作業員は重い荷物を持ちながら走り回っており、口頭の指示は物理的に頭に残りません。
「張り紙」「色分け」「図面」で可視化することが、唯一の解決策です。
彼らに悪気があるケースは稀です。ほとんどは「プロの慢心」と「情報の断絶」が原因で発生します。
ベテランほど「引越しはこうやるものだ」という固定観念が強く、顧客の細かい要望を「素人の非効率な思いつき」と軽視し、無意識に聞き流す傾向があります。
「この部屋から先に」と言われても、「いや、玄関から近い順に積んだ方がトラックの積載効率が良い」と勝手に判断し、無断で手順を変更します。
あなたがリーダー(社員)に伝えても、リーダーが忙しくてバイトに伝えていないケース。末端の作業員は何の指示も知らされずに動いています。
「言った言わない」の水掛け論を防ぐには、物理的に「間違えられない環境」を作ることが重要です。以下の3つのテクニックを駆使してください。
部屋ごとに「テーマカラー」を決め、視覚的にリンクさせます。文字を読む必要がないため、外国人スタッフや短期バイトにも100%伝わります。
ダンボールに通し番号(No.1~No.50など)を振り、自分の手元のリストに中身を控えておきます。万が一紛失した際に「No.12の箱がない」と即座に指摘でき、盗難抑止力にもなります。
特に「運んでほしくないもの」「注意してほしいもの」には、A4用紙に極太マジックで書いた張り紙を直接貼ってください。
また、新居の玄関には、手書きで家具の配置を書いた「拡大間取り図」を貼り、作業員全員がいつでも見られる状態にしておきましょう。
作業開始直後、リーダーだけでなく「作業員全員」を集めてもらい、以下のことを伝えます。これをやるだけで、スタッフの意識が劇的に変わります。
「本日はよろしくお願いします。
2点だけお願いがあります。
① ダンボールに貼ってある色のテープと、新居の部屋の色を合わせてください。
② 『運搬禁止』の紙が貼ってあるものは、絶対に触らないでください。
これ以外はプロの皆様にお任せします。冷たい飲み物を用意しているので、休憩の時におっしゃってください。」
それでも作業中に指示が無視されたり、勝手な判断で進められそうになった時は、遠慮なく作業を止めてください。
「すみません、ちょっとストップしてください!
先ほどの指示と違う動きになっています。
リーダーの方、一度確認をお願いします。」
「おっしゃることは分かりますが、効率よりもこちらの指定した手順を優先してください。
もし要望通りに進めていただけない場合、作業完了の確認サインはできません。」
「運ばないでと言った不用品」を新居に運ばれてしまった場合や、指定と違う部屋に大量の荷物を置かれた場合は、明確な契約不履行(債務不履行)です。
これらを認めさせるためには、「指示書(張り紙の写真やメールの控え)」という証拠が不可欠です。口頭だけでは「聞いていない」と言われて終わります。
引越し業界歴23年。現場リーダーとして数千件を指揮。「指示が伝わらないのは発信側の責任もある」という厳しい視点を持ちつつ、素人でもプロを動かせる「可視化テクニック」を提唱。トラブルゼロの現場作りを支援している。